翌朝、男はコトコトという物音で目を覚ましました。そして、漂ってくるみそ汁のにおいに気づきました。娘が早起きをして作ってくれたのです。いつの間にか部屋の中はきれいに片づけられています。2人で食べる朝ごはんは本当においしいものでした。男は小さい頃、死に別れたお母さんが作ってくれた朝ごはんを思い出しました。男は娘に「薬草を取りに行くからもう帰りなさい。」と、言いました。ところが、娘は「私には行くところがありません。」「いっしょに連れて行ってください。」というのです。男はしかたなく、山に連れて行くことにしました。ところが、不思議なことに昨日までちっとも採れなかった薬草がこの日ばかりは持てないぐらい採れるのでした。2人は次の日も、そしてまた次の日も連れだって薬草採りに山に行きました。そして、仲よくなった2人は三池の里に春の訪れを告げる市が立つころには夫婦になっていました。2人はたくさんの薬草を市に出しました。それは飛ぶように売れました。それからは2人にとって本当に幸せな日々が過ぎていきました。

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